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お湯の味わいは沸かす材質で決まる
鉄瓶でお湯を沸かす2つのメリットの共通点は「鉄という材質」にある。
1つ目のメリットは
「鉄以外の材質との違い」だ。
水道水に含まれる塩素。
塩素の存在は多くの方がご存知だろう。水道水や市販の水を、普段のあなたはどんな材質で「沸かして」いるだろうか。
沸かす材質によって塩素除去には差が生じる。ましてや、沸かす前より塩素が濃縮されてしまう材質があるほどだ。
アルマイト、ステンレス、ホーロー、ガラスなど材質は様々であるし、水の硬度や含まれるミネラル量など条件は異なる。
塩素除去だけに焦点を絞れば、どの材質よりも鉄で作られる鉄瓶の塩素除去率は優秀だという。
塩素除去のメカニズムはこうだ。
イオン状態の鉄がお湯に微量溶け出し残留塩素と反応。様々な物質(特に塩素)が除去される。
鉄以外の材質との違いはこれだけではない。
鉄は熱との相性が良く冷めにくいうえに、甘くまろやかになるのだ。
お茶、コーヒー、紅茶、お湯を使った料理、赤ちゃんのミルクに至るまで、より一層美味しく頂くことができる。
鉄瓶で沸かした「白湯(さゆ)」ほど違いが分かる飲み方はないだろう。
【おいしい白湯を沸かすポイント】
①フタがない容器に水を貯め一晩放置する。
②鉄瓶にこの水を注ぎ、フタをしないで沸騰させる。
③沸騰させた後、中火で10分程度沸かす。
とても簡単。
きっと、甘くまろやかに変化することを実感できるはずだ。
鉄瓶で沸かしたお湯に含まれる鉄イオンは体内吸収率が高い
2つ目のメリットは
「鉄だからこそ得られるもの」だ。
血は赤血球に鉄が含まれているから赤い。
赤いのは鉄の色。
つまり、正常な赤血球を維持するためには鉄分補給が必要。
男性に比べ、女性と成長期の子供にこそ欠かすことのできない栄養素が鉄分である。
5人に1人が貧血症または準貧血症な現代。
からだがだるい。頭がすっきりしない。めまいや立ちくらみがする。
こうした症状のほとんどは「鉄不足の貧血」が原因。アルツハイマー予防効果も確認されていることから鉄分を積極的に摂取したい。
それでは、日常生活で摂取できる大まかな2つの鉄分を整理しておこう。
ほうれん草・小松菜・大豆類・海藻類・穀物・牛乳・卵・貝類などの植物性食品に含まれている
「3価鉄イオン(Fe3+)の非ヘム鉄」と、
肉類・魚類などの動物性食品に含まれている
「2価鉄イオン(Fe2+)のヘム鉄」だ。
体内での吸収率は非ヘム鉄の「5%以下」に比べ、ヘム鉄は「15~30%」と圧倒的に優れている。
ここで注目頂きたい点は、鉄瓶から程よい濃度で溶け出る鉄分は「ヘム鉄である2価鉄イオン(Fe2+)」という事実だ。
「イオン状態」で摂取できる「吸収率の高いヘム鉄」。鉄瓶で沸かしたお湯を日常的に飲用することにより「鉄不足の貧血」を予防できるのだ。
鉄瓶で沸かしたお湯でお茶を飲む習慣は、日本人にとって理にかなっているといえる。
短期間で鉄瓶内部に「湯垢」を付着させる方法
鉄瓶を永く使うために、サビを抑制する湯垢を内部に付着させることが重要だ。
水質によって付着具合は異なるが、湯垢が付着することでお湯はすっきりとよりおいしくなる。
水が蒸発することでミネラル成分が付着したものが「白い湯垢」だと考えられる。
問題は「いかに早く付着させるか」だ。
すばやく付着させることは、
「メンテナンスを楽に」
「素早くおいしいお湯」
に直結する。新品の鉄瓶ならなおさらだ。
そこで私が出した答えは「硬水」である。
一般的に「硬水」とは、カルシウムやマグネシウムなどミネラル成分の含有量が多い水とされ、逆にその含有量が少ない水が「軟水」だ。
きっと「硬水」なら時間短縮を実現できるのではないか。私が用意した「特別な水」がこれだ。
世界最強の硬度を誇るドイツ生まれのミネラルウォーター。
硬度はなんと「1,800mg/L」。
日本の水道水の平均硬度が「約50mg/L」であるから、その「硬さ」は驚異的。
きっと成分表記に驚くだろう。
「硬水」ではない「鉱水」だ。
さらに金属と相性の悪い「塩分(ナトリウム)」が少めで、鉄瓶にもってこいの水だ。
炭酸と無炭酸の2種類が購入可能。私はスタンダードな無炭酸を「12L」購入した。
ナトリウム(2.9mg/100ml)
カルシウム(52.8mg/100ml)
マグネシウム(12.4mg/100ml)
カリウム(0.7mg/100ml)
下記の画像をクリック頂ければメンテナンス動画が再生される。
動画では鉄瓶内部の変化をご覧頂ける。あなたの参考になれば幸いだ。
【動画】3/4 南部鉄器 鉄瓶メンテナンス永久保存版 湯垢付着編
尚、4回目の湯沸しから使用したガスコンロがこれ。高火力、ダブル風防でアウトドアでの湯沸しにも最適である。
ちなみにガスの火は水分量が多く鉄瓶には不向き。動画の続編ではそれを解消するヒントを紹介している。
内部と外側の集中メンテナンスを終え、真っ赤だった内部に白い湯垢を短期間で付着させることに成功した。
次回は鉄瓶で沸かしたお湯で、はじめてのお茶を淹れる。
photo by Masahito Ichinose(Japan)