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鉄瓶の製造工程を理解してサビを落とす

 04/28/2017   

鉄は必ずサビる

鉄瓶を「使いこなす」上で重要な心構えがこれだ。鉄で作られた鉄瓶は必ずサビるのである。

ではどうしたら「サビる」のか。
「鉄瓶に水を残したまま放置」すればサビるのである。

特にお湯が水になるまで放置することは、絶対にやってはいけない行為である。

もともと鉄瓶は完成の時点で「サビを抑制する処理」がされている。

外側への「うるし焼付け」
内側への「酸化皮膜」処理である。

記事後半でうるしの焼付けに触れる。ここでは酸化皮膜について詳しく触れたい。

酸化皮膜を付ける工程は「釜焼き」と呼ばれる工程である。正確に言えばこの釜焼きは「金気止め処理」だ。

鋳込みが終わった鉄瓶を炭火(約800~900℃)で熱していく。
こうして酸化被膜を焼成することで、サビを防ぐ被膜を作るのだ。

これが
「絶対に内側をこすってはいけない理由」
である。

この酸化皮膜を不用意に破損させずに、なるべく早く鉄瓶をお湯に慣らすことが重要だ。

皮膜の効果が薄れる前に「湯垢を付着させサビに強い内側」に育てるのである。
※ 湯垢については次回。

「一晩中水を入れたままにしてもサビなくなる」と聞くが、私はオススメしない。

やはり沸かしたあとは、内側の水分を完全に飛ばすべきだと思う。

この工程を省くことにより、錆びやすい安価な鉄瓶があるようだ。
鉄瓶を購入される際は、この「釜焼き」がされているかどうか。をひとつのポイントにされたい。

それでは、鉄瓶の製造工程を見ていこう。

伝統工芸士が120余りの工程を経て生み出す

【鋳型の製作】

鋳型は実寸代の図面を描くことから始まる。
金属板(木型)と、馬(うま)と呼ばれる道具を使い、土と粘土を回しながら鋳型を成形する。この工程を「型びき」という。

【文様(図柄)押し】

鋳型が乾く前に文様(図柄)をかたどる。
釜師の手作業によるもので、釜師によっては右寄りや左寄りにずれることもあるそうだ。

文様押しのほかに「ぼこぼこ」した質感を出すため「肌」と呼ばれる加工を鋳型に施すという。

出来上がった鋳型を乾かし、およそ900℃の高温で焼き固める。同時に内側にススを付着させることで鋳型から鉄瓶を外しやすくするそうだ。

これを「焼き型法」と呼び、焼き型法こそ南部鉄器の伝統的な技法だという。

一方で、金型を使い鋳物砂を押し固めた鋳型(焼きあげない鋳型)にそのまま鉄を流し込む工法を「生型法」と呼ぶそうで、
こちらの工法は、効率的で大量量産に適している。

【鋳込み(鋳造)】

中子(なかご)と呼ばれる型を、焼きあがった鋳型にいれ組み立てる。
中子と鋳型との間にできた隙間が鉄瓶の厚みとなるのだ。

組み立てた鋳型に解けた鉄(湯(ゆ))を鋳型に流し込んでいく。
この鋳込みを「湯汲み(ゆくみ)、注湯(ちゅうゆ)」と言い、この湯の「湯加減」は釜師の経験が頼りだ。

湯の温度は約1450℃位まで達する。

鋳込みが終わった鉄瓶を鋳型から外し、中子とバリを取り除く。

【釜焼き】

※ ここでは省略する。

全体を金ブラシでこすった後、水に漬けて漏れを確認する。

【仕上げ】

鉄瓶を熱しながら外側に「うるし」を焼き付けていく。うるしは固まると強い皮膜を形成して外側をサビから守るのだ。

さらに、サビ水とお茶を混ぜた「おはぐろ」をうるしの上に焼き付けていく。これはうるしの艶をわざと消すためだ。

水気を絞った布で何度も外側をふき上げた後、取っ手と蓋をつけて鉄瓶は完成する。

毎日使い続けることが、最良のメンテナンス

「サビを抑制する2つの処理」はもちろん永遠には続かない。

鉄瓶の寿命は
「釜師からあなたに引き継がれた」
のである。

下記の画像をクリック頂ければメンテナンス動画が視聴できる。

2/4 南部鉄器 鉄瓶メンテナンス永久保存版 集中メンテナンス編

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南部鉄器 鉄瓶メンテナンス永久保存版の全動画再生はこちらから。

「日常メンテナンス」はとても簡単。
サビを恐れるあなたにも簡単にできる作業だ。

①毎日お湯を沸かし、内側に「湯垢」を付着させる。

②沸かした後は、内部を完全に乾燥させ台所油などが付着しないように保管する。

③時間があれば、お茶の「出しがら」を含ませた手ぬぐいを硬く絞り、外側を「ポンポン」と叩く。

※ ②の保管方法は人それぞれだ。油だらけの鉄瓶が気にならなければ台所保管でも良いだろう。

※ 基本的に③はしなくても問題ない。ただこの手間を惜しまず続ければ「あなただけの独特の艶」を出すことができるのだ。

日常メンテナンスをご理解頂いた上で
「普段行わない治療」に触れたい。

「Part 1」でも触れたが、
まずは「鉄瓶の現状を確認」して欲しい。

①漏れはあるか。
②沸かしたお湯は無色透明か。
③沸かしたお湯は無味か。

【お湯が赤い。お湯が金気臭い場合】

内側のサビを柔らかいブラシで軽く落とす。
吹きこぼれない程度の水を入れ、湯呑み1杯分の煎茶(緑茶でもよい)を加える。
沸騰したら弱火にし30分ほど煮出す。
火から降ろし10時間ほど放置する。

お茶のタンニンとサビが反応し、
黒い「おはぐろ」がサビを抑える皮膜を作る。

集中メンテナンス時に使用しているグローブ:グリップスワニー

内部をすすいだのち、濁らなくなるまで沸騰を繰り返す。

昔は栗や芋の皮を煮てサビを止めていた。
要するにタンニンが出れば何でも良いのだ。

この方法はサビの具合による。

真っ赤でボロボロの状態では改善されない場合がある。そんな時はメーカーに頼るしかない。

【外側がサビてしまった場合】

「Part 2」を参考にして欲しい。

粉が吹く程度のサビなら、日常メンテナンス③で十分に効果が、

「サビが固形化」している場合、金ブラシで軽くこする程度に落として日常メンテナンス③を試して頂きたい。

【漏れがある場合】

当然ながらメーカー修理が必須となる。

私の場合は「しめる」程度だったので、全く気にせず使用している。しばらく沸かすと鉄の膨張で「治まる」からだ。

人それぞれ印象は違う。
少しでも違和感を感じたら「本格的に使い始める前」に修理するほうが無難である。

何度でも言う。
「本格的に使い始める前に」だ。

メーカーによると煎茶を煮出す対策は、漏れにも効果があるようだ。

「Part 2」で紹介した「米のとぎ汁を煮る」という対策も是非試して欲しい。

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次回は「湯垢付着の時間短縮」について書きたいと思う。

photo by Masahito Ichinose(Japan)


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コンテンツマーケター

プロフィール

一之瀬 公人

masahito ichinose

東京都江東区生まれ。現在は長野県南部在住。妻と息子の3人家族。

モノに対する好奇心が旺盛だったことから『MONO』で有名な雑誌の編集者となる。

広告代理店でクライアントのマーケティングを担当する。モーターショーやゲームショーのブース企画。Fからはじまるミントタブレットなど日本進出する外資企業の浸透戦略を担う。

夢だったニューヨークのクライスラービルを観るため渡米。(ゴジラとアルマゲドンで壊された)

アメリカ・カナダで働いたのち、ハトのマークのボディーソープで有名な外資系トイレタリー企業にヘッドハントされる。外資系ホテルを対象とした特殊部隊に所属。担当ホテルへの営業戦略、部隊全体のマーケティング戦略を担当。

先の経験を買われシティーホテルの支配人を任される。経営ノウハウを積みサラリーマンを卒業し独立。

これを期に、父の故郷である長野県に移住を決める。長野県で好きな地域は、松本市中心部と安曇野周辺。

結婚し長男を授かる。子育ての8割をこなし、厄年から脱却。第二の人生を本格的に歩み始める。

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